第131章 心の帯を緩めて
「取り敢えずこれだけ部屋に持って行く。
終わったらまた来るから、」
「凛。」
モブリットに引き寄せられるがまま、胸板に顔を埋める。
少し速い鼓動が聞こえて、そっとその音に耳を澄ませた。
「……ごめん、ちょっとだけこうしていてもいい?」
「……うん。大丈夫。」
モブリットも連日の激務で疲れている筈だ。
その上調査前の緊迫感ある訓練は、副官としての責任感も重くのしかかるだろうし、精神的にも疲労が溜まっているだろう。
顔を少し上げ、伸ばした手でモブリットの髪を撫でる。
「いつもお疲れさま。」
「……ありがとう。
今夜は凛と会えるから、そう思えばまだまだ頑張れそうだ。」
甘えてくるように首筋に顔を埋められ、くすぐったさと一緒に嬉しさも込み上げる。
モブリットの首に腕を回そうとした瞬間、勢いよくモブリットの身体は離れ、それと同時に大きなため息が部屋に充満した。