第130章 初めての言葉と感覚を
「……ありがとう。」
咄嗟に振り返り、今にも泣き出しそうな顔をしている凛を正面から強く抱きしめる。
「……何でお前が礼を言うんだ。」
「嬉しかったから……リヴァイが、そうやって言葉にしてくれたことが。」
少しくぐもり、潤いさえ感じられる声が、鼓動を加速させる。息を呑む。
この感情を表す言葉が見つからず、凛を抱きしめたままで口を噤む。
「……リヴァイ、ありがとう、」
堪えきれなかったようにもう一度落とされた同じ言葉が、胸の奥深くまで沁み込んで、込み上げてくる思いが口を開かせた。
「思っていたことを口にしただけだ。」
凛の顔を引き上げ、下瞼に溜まった涙を溢すように、涙袋に手を沿える。
生温かく濡れた感触を帯びた指先でそのまま頬を撫でる。
きっと自分は赤面しているだろう。
慣れない感覚に戸惑いながらも、今ならこの感覚は悪くないとさえ思える。
「……凛、俺はお前を愛している。」
もう一度言葉にしてすぐ、零れ落ちた涙を掬い上げる様に、凛の頬に唇を当てた。