第128章 千丈の堤も蟻の穴より崩れる
「凛。俺はお前を手放す気はない。
お前が元の世界へ帰りたいと懇願したとしても、
帰したくないと駄々を捏ねたくなる位にはな。」
凛の熱い吐息が、肩を覆う。
そうしてすぐに、
じわじわと湿った感触が伝わってきて、
不意に凛の髪に手を伸ばした。
「俺だけじゃない。
ここにいる誰もが思っている。
お前はこの世界に必要な人間だ。」
「……っ、」
何か言葉を発しようとしたのだろうが、
嗚咽で掻き消される。
ずっとこの世界に、いや……、
いつまでも俺の側にいろ。
心の中でそう唱えながら、
凛の泣き声が落ち着くのを待った。
「……ごめ、ん…、リヴァイ、肩…」
「ああ、別に問題ない。
どうせこれから脱ぐ予定だったからな。」
凛の身体が少し離れてすぐ、
肩だけがヤケに濡れた団服を脱ぎ捨て、
シャツのボタンに手を掛ける。
するとすぐに、
凛の小さく吹き出す声が耳元を掠め、
深い安堵感が胸の中を駆け巡った。