第128章 千丈の堤も蟻の穴より崩れる
夜の8時を過ぎた頃。
リヴァイは仕事を片付け、
足早に廊下を進んでいた。
凛を一人にさせる時間が
長くなることについて、憂慮しかない。
今あいつを一人にさせるべきではないことくらい
分かっている。
だが、自分が拉致された現場に何時間も滞在し、
状況についての質問攻めに合う方が
心を痛める原因になるだろう。
着いた先のドアをノックすると、
暫くの間を置いて、ゆっくりドアは開かれた。
「……凛、中に入るぞ。」
返事を聞かないまま、凛の部屋に入ってすぐ、
ドアを閉めるとほぼ同時で、
凛を強く抱き寄せた。
「リヴァイ、お疲れさま。色々面倒かけて」
「いい。お前に掛けられた面倒じゃねぇよ。」
謝罪の言葉はいらない。聞きたくもない。
凛の言葉を遮り、深く息を吸い込んだ。
「お前、ずっと一人で部屋にいたのか?」
「……うん。」
「そうか……」
きっと今気を許せる誰かに会ってしまえば、
乱れた感情を晒すかも知れないと
思ったのだろう。
こっちとしてはその方が、
気が紛れていいと思っていたが、
凛はそうしないだろうということも
予測は出来ていた。