第124章 純粋で明白な感情
凛の頬に手を伸ばす。
濡れた感触は凛の体温そのもので、
そっと指先で拭った。
「何故君が泣くんだ……」
「……嬉しかった。
エルヴィンが、何を感じて、何を思って、
どんなことを考えていたのか、
今ハッキリ分かって、安心したから。」
「……自分勝手な理由だらけだったのに?」
「自分勝手?
仲間を想っての行動ばかりじゃない。」
「……殆どは自分の為だ。
俺の行動原理は、人類の前進の為だけじゃない。
世界の真相を知りたい。
自分の目で本当の歴史を確かめたい。
その夢を果たす為に、
人類を前進させようとしているようなものだ。」
「でも、その夢を果たすことが出来れば、
人類は前進する。
仲間の死を無駄にしない為。
その気持ちだって少なからずあるのは
明らかだよ。」
凛の力強い発言に、
返すのに適切な言葉がなかなか見つからない。
凛の頬に手を当てたままで、静かに考え込む。
「そんなの自分を正当化してる、って思う?」
「……そうだな。」
「それならエルヴィンはそう思っていたらいい。
でも私は、さっき自分が言った言葉も、
事実だと思ってる。
エルヴィンは自分の夢の為にも、
仲間の夢の為にも、命を捨てる覚悟がある。
並大抵の信念じゃ、そんな覚悟は生まれないよ。
その信念は誇っていいし、
後ろめたさを感じるようなものではないから。」
凛の言葉を受けて、自分の心臓が、
また一段と活発に動き始めたのが分かる。
……彼女の言葉には力がある。
そう思わずにはいられない程、
胸の奥が酷く熱を帯びていた。