第115章 熱のせい
「……エルヴィン?」
エルヴィンの胸の上で抱きしめられ、
鼓動の音がハッキリと鼓膜を震わす。
かなり速い上に、相当熱い。
完全に熱が上がっている。
余計な話をし過ぎて
無駄に頭を使わせたからかも知れない。
「エルヴィン、ごめん。
ちょっと色々話し過ぎたね……
少し休もう?私もずっとここに居るから。」
エルヴィンの胸から起きようとするが、
また強く抱きしめられ、
行動は簡単に抑制された。
「君が幸せなのはいい。
だが、良くないんだ……」
「……え?」
「君は俺が」
背中に回されていた筈のエルヴィンの腕が
一気に力を失くす。
「エルヴィン?!」
呼吸は少し荒いようだが、
眠っているようだった。
ついに力尽きた、というところだろうか……
エルヴィンの額に冷やしたタオルを乗せ、
脇の下にもタオルを挟む。
徐々に落ち着きを取り戻していく呼吸に
耳を澄ませながら、深く安堵した。
あのままエルヴィンの言いかけた言葉の続きを
聞いてしまっていたら、
きっとまたエルヴィンに
強く揺らいでしまっただろう。
……エルヴィンは、明日になったら
今日話したことなんて
忘れているんだろうな……
そう思うと、安心感も湧くが、
どこか残念に思ってしまう自分もいた。