第115章 熱のせい
「……すまない。
君を束縛していい立場じゃないのに。」
「私にも同じことが言えるから、
謝られることじゃないよ。」
「……だが、最近凛は俺を束縛する気が
なさそうに思えるんだが。」
「ん?どういう意味?」
「俺が貴族の集まる夜会に行くと言っても、
あまり嫌な顔をされなくなった。」
エルヴィンは
そんなことを気にしていたのか。
これは熱であまり頭が回っていないから、
オブラートに包むことも忘れて、
色々素直に話してくれる、
という部分もありそうだ。
今のうちにエルヴィンの本音を
たくさん聞き出したい。
そう思い話を続ける。
「それについては仕方ないって
もう割り切ってるからね……
と言うか、割り切ってないとダメでしょ?
エルヴィンもリヴァイも、
兵団の為に身体を張ってくれてるのに。」
「割り切られるのも辛いんだ。」
「……じゃぁ毎回強く引きとめていいの?
エルヴィンだって喜々として
参加してる訳じゃないのに、
夜会に行く度に私に嫌な顔されてたら、
厭な気分にならない?」
「……ならない。
嫌でも行かなくてはいけないが、
その都度君が嫌な顔をしてくれるのは
嬉しい……」
布団に潜り込んだままで、
ぼそぼそとくぐもった声が聞こえる。
……可愛い。
こんなエルヴィンは初めてだ。
つい抱きしめたくなる。
身体が弱っているせいで
心も弱っているのか?
布団から少しだけ見える頭を
そっと撫でてみた。