第115章 熱のせい
「エルヴィン、どうかしたの?」
顎髭を軽く撫でていたミケを見上げる。
相変わらずミケと立った状態で話すと、
首に負担がかかる。
「いや……
それが分からないから困っていてな。
お前が部屋に行けば、
きっとドアを開けてくれるだろうと思って
頼みに来た。」
「……誰も部屋に入れてくれない、
ってこと?」
「ああ。まぁ、理由はなんとなく
予測できるんだが……」
ミケはそう言って
困惑したような表情を浮かべてすぐ、
「取り敢えず行ってみてくれ。」
と、私の肩に軽く手を置いた。
「分かった。
でも、私も入れなかったらどうするの?」
「大丈夫。絶対ドアを開けてくれる
魔法の呪文をお前に授けるよ。」
ニヤリと微笑むミケの顔が、耳元に近付く。
囁かれた言葉は、
自分に対して言われたわけでもないのに
自然と身体を熱くさせた。