第106章 嫉妬の細波
「残念ながら彼女じゃないからね。」
「そう言うってことは、片思い中か?」
「ああ。」
モブリットの発言を聞いた直後の
イアンの表情は驚きの色を帯びていた。
「意外だな。」
「意外?」
思わず私が問いかける。
「いや、モブリット、
昔から女関係には疎かったから。
そもそもこんな風に片思いをしていることを
簡単に認めるような奴じゃなかった。」
「……凛に無駄な情報を教えるなよ。」
「そうか。何だか安心したよ。」
イアンはモブリットの言葉を無視したまま、
安堵の籠った声を出した。
「イアンさんってモブリットと
訓練兵時代の同期、とかですか?」
「いえ、実家が近くて。幼馴染なんです。」
「なるほど……」
「だからモブリットのことは
大体分かりますよ。」
「え、色々聞きたい!」
つい身を乗り出してしまうと、
イアンの表情は緩んだ。