第104章 独占欲
「……ありがと、」
何に対しての“ありがとう”なのか、
問いかける直前、
凛の瞳は瞼に覆われ、
既に意識はこの場にはない状態になっていた。
……相変わらずこいつは
こっちのペースを乱すのが得意だ。
そのお蔭で身悶えする状況が絶えない。
それでも、それすらも
凛の魅力にしか思えないのは、
自分が凛を如何に思っているかを
実感する要因になる。
「……お前は、どうやったら
俺だけのものになるんだ?」
つい言葉になった感情は、
部屋の中だけを朧げに浮遊した。
こんなこと、こいつが寝ている時くらいにしか
言える訳がない。
完全に自分の性合に似つかわしくない発言だ。
凛と出会ってから
自分に不釣り合いな感情ばかり
湧き出して来る。
だが、それを悪くないと思える精神も
芽生えていた。
深い眠りに入りきった凛の頬をそっと撫で、
自分もゆっくりと目を瞑った。