第2章 忘れじの記憶
【Scene2】Eccentric boy
トロスト区の復興作業を兵団総出で手伝っていたある日のこと。
「待ちやがれクソガキども!一人残らずうなじを削ぎ落としてやる……!!」
「ぎゃああ!」
「刈り上げが怒ったー!」
「逃げろ〜!」
皆が砂埃まみれになりながら建物の修繕作業をしているというのに、かの有名なリヴァイ兵長殿は地元の子供と鬼ごっこに興じていた。
……と、云うのも暇を持て余していそうだった子供達に
『あのオジさんの刈り上げをジョリッてごらん。きっと楽しいよ』
と私がテコ入れしたのが事の発端であることは言うまでもない。
「やーい刈り上げ兵長ー!」
「ここまでおいで〜!」
中々にしてエキセントリックな子供たちに兵長の怒りは上昇していく。
目から紅い閃光を出さん勢いで人類最強がトリガーに手を掛けた時だった。
ドシャアア……ッ!
そんな音を立てて子供の一人がずっこけたのだ。
そりゃあもう、
見事なヘッドスライディングで。
「うっ……うわああん!痛いよおお!」
思いきり膝を擦りむいてしまった少年は大声を上げて泣き始めてしまった。
私を含め周囲の大人が咄嗟に駆け寄ろうとする最中、真っ先に膝をついたのはリヴァイ兵長で。
「バカ野郎……ちゃんと前を見て走らないから転ぶんだ」
血の滲む膝小僧に自らのハンカチを当ててやった兵長は厳しくも優しい声音で少年を諭す。
「う……ひっく…」
「もう泣くな。膝の肉がちょっと削げたぐらいじゃ死にはしない」
あれで励ましてるつもりなのか。
いや、きっとそうなんだろうけど。
結局兵長はその少年が泣き止むまで側に居て、最後には医療班から受け取った絆創膏を貼ってあげていた。
『兵長ってああ見えて意外と子供好きだったんですね』
私の隣で復興作業に励んでいた筈のグンタさんに声を掛けると、彼は両鼻から鼻血をスプラッシュさせて“イクメンっぽい兵長”を見つめている。
ちなみに、リヴァイ班を始めとする調査兵の大半が同じような反応をしていたのは言うまでもなく。
私もまた意外な兵長の一面に
“胸キュン”してしまうのであった。