第3章 地平線の見える丘で
『な……何です、突然』
私は唐突な愛の言葉に赤面したが当の本人は「急に伝えたくなった」などと言って涼しい顔をしている。
暫しの沈黙。
もうすぐ夫婦になると云うのにやっぱり兵長とは間が合わない。
「」
再び私の名を呼んだ彼の声は明らかに先程とは違っていた。
甘い毒を孕んだ響き。
兵長がこれを使うのは決まって“キスして欲しい”時だ。
『駄目ですよ……こんな所じゃ』
「誰も来やしねぇよ」
『そういう問題じゃありません』
言いながらそっぽを向くと、兵長は小さく笑いを漏らして上半身を起こす。
「ったくお前はそればかりだな」
そんな事を言ったところで俺が止める訳ねぇだろ。
私の腰に回される相も変わらず強引な手。抵抗しようと口を開きかけた時には既に唇は奪われていて。
ぐらり
世界が回った……なんて、可笑しな台詞が浮かんだ時には既に草の絨毯に押し倒されていた。
『ん……っ』
外の風で冷えた兵長の唇がいやらしく首筋をなぞる。
ちょうど動脈があるであろう辺りで動きを止めた彼は、薄い唇を開いて深いキスを落とし始めた。
ちゅ……っ
首筋から離れる熱い舌。
ジンと痛むキスの痕。
兵長に愛されている証拠が身体に刻まれて心の奥が熱くなっていく。