第1章 【キレイな最期を】
家に着くとが作ったキャンドルをそっと手に取った
キャンドルという物は使うといずれ原型をなくし溶けて消えてしまうらしい
使えるわけないだろ、とアイアンハイドは文句を言う
まるで彼女自身のように
彼女が言っていた桜のように
どうして自分に残した物すら消えてしまう物を渡したのか
それはの強い願望だった
綺麗に散りたい
最期まで綺麗に生きたい
それが出来ないからせめて桜のキャンドルを自分に見立て
美しく死にたかったのだ
「お前がそう望むなら、そうした方が良いのか」
アイアンハイドはキャンドルにそっと火をつけた
ゆらゆらと炎が揺れる
良い香りがただよってきた
とても綺麗で幻想的だった
アイアンハイドのブレインサーキットにはとの思い出が駆け巡る
人間は脆い
脆くて弱い
俺にはこのキャンドルとかいう物や桜という花なんかより
はずっと綺麗だと思う
自分を傷つけてしまう弱さも
俺をなでる小さな手も
愛しいという感情を初めて抱いた
俺じゃ守れなかったのか
ただこうして今みたいに溶けて消えるのを見てるだけしか出来なかったのか
「フン…柄じゃないな」
アイアンハイドはキャンドルを消し武器倉庫の1番上に置いた
桜のキャンドルは少しだけ溶けかかっていたが
充分綺麗なままだった
キャンドルをに見立てるというなら
せめてそのままで居てくれ
消えずに
そのままで居てくれ
END