第10章 小さな〈氷〉
トントンと軽く腕を叩かれたから一旦離れたけど、またすぐに近づく。
「ちょ、ちょっと待って」
「ごめん我慢できないんだ」
余裕無さすぎだろオレ……待ってって言ってるじゃないか。
でも止められない。
「っは、ごめん、苦しかったよな」
「ん、はぁ、大丈夫』
左手で頭を抱き寄せて、その上にオレの頭を軽く乗せた。
セミロングの髪から感じる優しい匂い……。
とても心地がいい。
もっと触れたくなって、空いてる右手でうなじを撫でてみた。
体を少しよじりながら「ちょっと……ふふ」とくすぐったそうにしている。
うなじから首にかけて腕をつーっと撫でての左手と手を繋いだ。
の熱っぽい瞳に捕らえられ動けない。
「くしゃみしそう」
「……ふっ、どうぞ」
タイミング悪いな……。
しばらく、くしゃみしそうでできない時間が続いたあとに「フィックシ!」と二回連続のくしゃみ。
ふっ、人のくしゃみってそれぞれだな。
毎度変わる人もいるしね。