第6章 〈赤〉鼻のトナカイ
は先ほど以上に頬を染め、無意識のようだが上目遣いをしながら何かを話そうとしている。
そうか、言いたいことは大体わかった。
けれどやはり本人の口から聞きたい。
一生懸命言おうとしているが、「あの……んと……」以外声になっていない。
ただ口から出される空気の音で、一文字目が「き」なのはわかった。
その「き」を連発している。
ここまで来ると言いたいことは流石に確信付いた。
「何かな?」
「優しく……キ、キ……」
可愛い姿に、思わず笑みがこぼれる。
それをはバカにされたと勘違いしたようだ。
「なんで笑うの!」
「お願いを言ってくれたら言おう」
「うっ……わかった。あのね! 優しく……キ、キス、してほしいなぁ……と」
「ふっ、わかった」
の後頭部を押さえ、今までで一番優しいキスをした。
甘い吐息がこぼれるほどの優しい……。
「さっき笑ったのは、が随分と可愛くお願いをしようとしたからだよ」
「なっ……恥ずかしいよもう……」
これまでクリスマスにはさほど思い入れはなかったが…のおかげで一生忘れられない日になった。
来年もまた、僕がトナカイとなって、願いを聞いてあげよう。
・。・。Mary Christmas・。・。