第15章 庶民の暮らしは198(いちきゅっぱ)
『え?』
低い声が私の肩を掴み、それに気づいた総悟が声の主を睨む。
沖田「何だってこうすぐに見つけちまうかな。俺の寝てる間にGPSでも取り付けたんですかィ?」
その視線をなぞる様に振り向くと、私の肩を掴んでいたのはムスッとした土方さんだった。
土方「…」
え、怖い。
何で怒ってるの…
『あの…なんですか?』
土方「オイ総悟…」
私の問いかけには答えず、土方さんが総悟に詰め寄る。
沖田「何でしょ?」
土方「また仕事抜け出しやがって!なーにが何でしょ?だ。なーにが暇してただコルァ!ケロッとした顔しやがって、暇もクソもあるか!俺たちの仕事はこれからなんだよ!」
沖田「土方さん、俺達の〇〇はこれからだ!ってのは大体打ち切りフラグなんですぜ?ってことで俺達の仕事も打ち切りでいいですよね?」
土方「どんな作者でも自分の仕事は全うしてから終わらせるもんだ!」
そう言って総悟の襟首を掴んで引きずり戻そうとする土方さん。
『あ、ちょっ…あの!』
私は咄嗟に土方さんの袖を掴んでいた。
土方「あ?」
『総悟連れてっちゃうんですか…?』
土方「…は?」
瞬く間に眉間にシワを寄せ、怪訝そうな顔をする。
ああ、そうか。
仕事の邪魔してんのは私か。
『あー…えと、なんでもないです。すいません』
パッと手を離し、総悟の手からレジ袋を受け取ると、拘束された総悟が土方さんを睨む。
沖田「土方さーん。邪魔しねェでくだせェよ。俺ァ今からさくらとデートして来るんでねィ。仕事なんか土方さん一人でも足りるでしょ」
いや、デートしようとしてた訳じゃないけど…
むしろ主婦共の戦場に引きずり込もうとしてたんだけど。
光の宿らない鋭利な瞳で土方さんを睨む総悟。
だが、土方さんも負けていなかった。
土方「デートだァ?そいつぁ邪魔しねェわけにはいかねぇな。お前もあの場に居たんなら知ってんだろ。俺はそいつに惚れてんだよ」
沖田「チッ…」
土方さんの言葉に総悟が歯噛みする。
嗚呼…なんだかとても居心地が悪い。
もう卵は諦めて今日は帰ろう。
『あの…邪魔してすいませんでした。私帰りますから…』
軽く頭を下げ、重たくなったレジ袋を引っさげて帰路に着こうとすると、肩をすくめた総悟がわざとらしくため息をついた。
沖田「あーあ...」
『?』
…総悟?
