第11章 俺のターン
神社へ着くと柱に寄りかかった土方さんが片手を上げた。
土方「お、来たな」
『...』
少し頭を下げて神社の境内へ足を踏み入れる。
土方「なんでそんな離れてんだ」
土方さんはそんな私を見て少し笑うと、私の腕を掴んで引き寄せた。
土方「何がいい」
そう言って差し出されたのは、たこ焼きやらりんご飴やらがわんさか入ったビニール袋。
土方「今日は俺の奢りだ」
『え、でも...』
土方「ん」
貰うのを躊躇っていると更に差し出される屋台の主役達。
『い、いただきます』
私はビニール袋から控えめに覗いていたラムネを手に取って一口含んだ。
瞬間、ビー玉がコロコロと回り、口の中で甘いラムネが弾ける。
『美味しい...!久しぶりに飲みましたこれ!』
懐かしい感覚に声を弾ませると、たこ焼きのパックを取り出しながら土方さんが薄く笑った。
土方「そうか」
あ...はしゃぎ過ぎたかも
『...すいません』
土方「いや、お前は笑った顔の方が似合う」
少し反省して黙ると土方さんは笑いながらそう言ってくれた。
そのままたこ焼きに爪楊枝を指すと、口へ放り込む。
ん?
その姿に何故か違和感を覚える。
なんか変...なんだろう。
あ...
『土方さんマヨネーズかけないんですか?』
そう、土方さんはあれだけ愛してやまないマヨネーズを微塵も乗せなかった。
土方「あー...」
バツが悪そうに頭をポリポリ掻く。
『?』
土方「そのー...アレだ」
土方さんの答えは意外なものだった。
土方「女は俺がマヨネーズかけてんの見ると、その...引くからな」
『ブフッ』
私は思わず吹き出した。