第9章 AかBかと聞かれたらCを取れ
『うわー...』
私の着付も終わり、意を決して鏡の前に立ってみた。
お登勢「どうだい?」
『なんか...浴衣って感じです』
お登勢「何だいそりゃ」
私のアホ丸出しな感想にお登勢さんが呆れたように笑う。
お登勢「それより次は化粧だよ」
『あ、はい』
お登勢さんに促されるまま鏡台の前に腰掛ける。
お登勢「ほら、目閉じな」
そこからは何をされているのか全く分らなかった。
されるがままに、ただただ目を瞑る。
私の知ってるメイクの仕方と大分違う...
お登勢「もう開けていいよ」
お登勢さんの声を合図に怖ごわと目を開く。
そもそもメイクなんてあまりした事が無いから似合っているのか不安でしょうがない。
『これ...』
お登勢「気に入ったかい?」
『...』
驚きで声が出ない。
誰だこれは。
お登勢「気に入ったみたいd...」
ドガァァァァン!
お登勢「!?」
『え...』
お登勢さんの優しい台詞。
それはスナックお登勢の扉を突き抜けた音によってかき消された。
ドドドドドド
そして鳴り響く地鳴りの音。
お登勢「何だい!?」
驚いたお登勢さんが店の方を覗くと
神楽「さくらー!」
涙と鼻水で顔中ズルズルになった神楽ちゃんが私のところへと突っ込んできた。