第6章 人のものってなんだか魅力的
『銀さん待って…!』
銀時「…」
必死で声をかけるが銀さんの背中は振り返らない。
『お願い…手、痛…』
そう言うと腕を掴む手が少し弱まり、そのまま路地裏へと引きずり込まれた。
体を壁に押し付けられる。
『ぁ…』
逃げようと体を捻ると足の間に銀さんの右足が滑り込み、逃げ場を失った。
銀さんが低く呟く。
銀時「おめェ…総悟に何された」
『え…どう、したの?』
銀時「何されたって聞いてんだよ」
話を逸らそうとしても銀さんがそれを許さない。
『…』
銀時「キスされたの?」
言うのを躊躇っていると銀さんが甘い声で呟いた。
『っ!』
銀時「ふーん。何も言わないってことはそういう事だと思っていいんだな?」
銀さんは目を細めて私の頬に触れた。
銀時「土方君のこと、好きなの?」
『な…ちがっ!』
慌てて否定する。
でもそんなものは銀さんに通用しない。
銀時「嘘つくんならもっと上手くやれ。そんなに分かりやすく真っ赤になってたら嫌でも分かっちまうだろうが」
そう言った銀さんは何故か切なそうに目を伏せる。
『…どうしたの?』
聞くと、銀さんはくるりと表情を変えて怪しく微笑んだ。
銀時「まだ分かんねぇの?なら分からしてやるよ。なァ…」
『!』
銀さんがさっきの土方さんと同じ様に顔を近づける。
銀時「総悟にキスされた時、どんな感じだった?ただ触れるだけ?それとも…コレ、使った?」
ペロリと舌を出した銀さんはどんどん顔を近づけてくる。
『ゃ…』
怖い。今の銀さんは凄く…怖い。
絆創膏の下にある傷がピリピリと痛む。
後数センチで唇が触れる…その瞬間
銀時「ばーか」
空いていた手で銀さんが私の鼻をつまんだ。
『へっ?』
銀時「キスされると思った?するわけねーだろ。男は好きでもねェ女にだって手ェ出せんだから気をつけろって忠告だ 」
それだけ言い残して銀さんがパッと離れる。
取り残された私は体重を壁に預けてズルズルと座り込んだ。
"好きでもねぇ女"
銀さんの置き去りにした台詞は、嫌に耳の奥でこだました。
『あ、痛い…』
この時の私は胸の痛みの正体に気がつくことが出来なかった