第5章 たまには後ろを振り返ろう
『私の両親はね、駆け落ちをしてたの』
さくらの第一声は、思いも寄らないものだった。
銀時「駆け落ち…」
『お父さんとお母さんは勘当されてたし、二人とも一人っ子だったから親戚は一人もいなかったんだって』
銀時「?」
"だって"…?
さくらの妙な言い回しが引っかかる。
『でも私、両親のことは覚えてないんだ。顔も声も。生まれて直ぐに事故で』
そこで台詞を切ったさくらは少し寂しそうに瞳を伏せる。
『身寄りがなくなった私は、近くの孤児院に預けられて高校生まで過ごした。でも高二の梅雨頃、院長が名の知れた富豪の娘だと知ったテロリストが孤児院に立て篭って私達を人質に取り、身代金を請求した』
銀時「…」
『けど、中々身代金は届かなかった。そして威嚇のためにテロリストが撃った銃の流れ玉に当たって…先生は殺され、テロリストはそのまま逃亡した』
そこまで言うと、さくらが小さな両手を強く握り締めた。
『だから私は、先生を殺したアイツを捕まえるために警察になった。P.A.T.O…私が入隊した組織の名前。テロリストや銃を所持した犯罪者を捕まえるための特別武装組織。そして私はここに来る前の日、アイツをブタ箱にぶち込んだ』
顔を上げる。
『けど、ちょっとその時に暴走しすぎてクビになっちゃって…あと一週間仕事したら退職命令が降りることになってたんだ』