第23章 桜人
懐かしい浮遊感。
身体が重力に従って高速度で落下していく。
私はその速さに身を任せ、目を瞑った。
『…先生』
私、あの子達の他にも、幸せを願う人たちができたよ。
一緒に幸せになりたい人たちができたの。
人の一大決心も何食わぬ顔で蹴散らして、勝手に思い出して、
こんなところまで追いかけてきて…
ズカズカ私の中に踏み込んでくる人たち。
『…?』
左手が温もりに包まれる。
大きくて固い手が空中で私を引き寄せ、
庇うように抱きすくめた。
真っ暗で何も見えないけれど、
懐かしい香りと温もりが確かにそこにあった。
『…』
私、この人たちと一緒に幸せになるよ。
だから先生、
幸せでいてね。