第23章 桜人
『なんで、ここに…』
神楽「なんでって、さくらを追いかけて来たアル」
『私を…?』
なんで
源外「よう、嬢ちゃん。久しぶりだな」
孤児院の裏から源外さんが現れ、物珍しそうに辺りを見回しながら手を振った。
『源外さん!話が違うじゃないですか。私のことは忘れるって…』
源外「なァに、しばらくの間忘れてたみてーだが、この間お前のとこに行かせろって店に押しかけて来やがったもんでよォ。おかげでもう一回タイムマシン作る羽目になったわ」
そんな、だって…
新八「忘れられるわけ無いじゃないですか」
『え…』
新八「こんなの残していかれたら、忘れられませんよ」
新八君の手には私が書いたレシピノートがあった。
『残ってたんだ…』
源外「言ったろ、消えるのは記憶だって」
もしかしたら、私の記憶と一緒に消えてしまうかもしれない、そう思いながらも、残していった。
私の作るご飯を食べて、幸せだと言ってくれた神楽ちゃんに、美味しいと言ってくれた皆に、美味しいご飯を食べて欲しかった。
神楽「そんな本だけ置いて行かれても意味ないアル」
新八「そうですよ」
新八君が困ったように笑う。
新八「さくらさんがいないと意味ないんですから」
神楽「それに、レシピ見ながら作っても全然違うアル」
『そんなはず…』
神楽「幸せな味がしないアル」
『…』
神楽「だから、帰ってきてヨ…」
縋る様な目で神楽ちゃんが私を見つめる。
帰ってきてって、そんな…
源外「余計なことは考えるな。ここに居てェならそうすりゃあいい。だがな、嬢ちゃん、」
源外さんは口の端をつり上げ、にやりと笑った。
源外「自分に嘘つけるようになるには、嬢ちゃんはちっと若すぎらァ」