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タイムマシンは幸せの鍵【銀魂】

第23章 桜人


翔太と別れたあと、私は庭に向かった。
廊下を渡り外に出ると、夏の夜風が目元の熱を攫っていく。

『ふー…』

孤児院の裏に回ると、昔当番制で水やりをした庭に出る。

『あれ…?』

人の手がほとんど加えられなくなった庭には、
生命力の強い野生の草花が顔を出していた。

『もっと荒れてると思ってた…』

それでも荒地になっていないのは、
子ども達でも難しくないようにと多年草が多く植えられていること、
そして

『きっと、みんなが整えてくれてたんだね』

レンガの小道を進む。

『…エキナセア、サルビア…ガイラルディア』

弟妹達が書いたプラカードもあの時のまま。

『ガウラ、クレマチス…』

昔からここが大好きだった。

『みんなごめんね、ずっと会いに来られなくて。弟たちに任せっぱなしになっちゃった』

レンガの花壇に座り、紫の濃淡が美しいクレマチスを眺める。

『…っ、わっ!』

突然強い風が吹き、体が傾いた。

『びっくりした、すごい風…』

風が止み、空を見上げる。

『あ…』

否、空は見えなかった。

庭に植えられた1本の大樹。
大きく枝を伸ばし、私の下にその影を落としている。

私は立ち上がり、その大きな幹に触れた。

『…帰ったよ』

孤児院ができる前から、彼女はここにいた。
ずっと私たち孤児を見守ってくれた。

『ただいま』




桜の木がそこにあった。
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