第21章 落とし物
ピピピピ…ピピピピ…カチッ
目覚ましを止め、伸びをする。
洗面所で歯を磨いて、顔を洗う。
昨日のうちにアイロンをかけておいたYシャツに袖を通し、ぴっちりとした堅苦しいスーツを上に羽織る。
炊き立てのご飯を茶碗によそってその上に卵を落とす。
『いただきます』
湯気をたてるご飯に醤油を垂らし、景気付けにかっこむ。
『ん、うまい』
万事屋を出てから一か月。
あの世界を出たのは9月6日。
ここに戻してもらうとき、日付は8月7日、私がタイムマシンに落ちた日の翌日にしてもらうように頼んだ。
『ごちそうさまでした』
鏡台に座り、髪を結ぶ。
日付をいくら操作してもらったとはいえ、伸びた髪は変わらなかった。
『やば!時間…!』
今日はコンビニのバイトの面接。
ここに戻ってすぐ、退職命令までの一週間を捨て、私は所属する組織に退職願を提出した。
退職願はすぐに受理され、私は警察をやめた。
『行ってきます!』
晴れて私もニートの身となったわけだ。