第20章 選択肢は少なすぎても多すぎても困るもの
~銀時side~
『銀さん』
花火をしている奴らを少し離れた所から眺めていると、さくらが様子を窺うようにそろりと近づいてきた。
銀時「…あ?」
『花火しないの?』
銀時「銀さんはあの程度の花火で喜ぶほどガキじゃねェの」
『…あっそ』
そして隣に座る。
『線香花火好き?』
銀時「あ?線香花火?」
『私花火で一番好きなんだけど…やらない?』
背中に隠していた線香花火の小さな袋を取り出し、有無を言わさず準備を始めるさくら。
銀時「地味だな」
『地味言うな』
銀時「もっと派手なのが好きなんだと思った」
『派手なのも好きだけどね。ほれ、銀さんの分』
銀時「おう」
『先に落ちた方が負け』
銀時「上等じゃねーか。負けた方は」
『これから一週間宇治銀時丼禁止』
銀時「それ俺にしかデメリット無ェだろうが!」
『はいヨーイ…』
銀時「ちょ、待て待て待て…」
『スタート!』
慌てて線香花火に火をつけ、ゆっくりと垂らす。
『言っとくけど、長年線香花火を極めた私の実力半端ないから』
銀時「お前ェ、俺が産まれてこの方線香花火以外したことねェって知ってんのかオイ。昔から線香花火は銀さんが担当って決まってんだよ」
『へぇ、そんなに好きなの』
銀時「皆俺には線香花火だけ残しておいてくれてたもんね。それ以外の邪魔なデカい花火は全部他の奴らが持ってってくれてたもんね」
『いらないやつ押し付けられてただけじゃ…』
銀時「お子ちゃまがコンクリに花火で落書きしてる間、俺はそいつらに目もくれず、背中向けて線香花火に勤しんでたもんね」
『…やめて、泣けてきた腕震える』
そして訪れる静寂。
『…』
銀時「…」
火花の散る音が耳に響く。
他の奴らの喧噪が遠く聞こえる。
『綺麗だよね、線香花火』
そう言ったさくらの顔は、線香花火の微かな明りで柔らかく照らされている。
その横顔は、俺が初めてコイツを家に上げた日
初めてコイツを幸せにしたいと思った時と同じ横顔だった。
今にも消えてしまいそうなほど儚げで
銀時「…そうだな」
お前は本当に
綺麗だ
「もう一度告うほかあるまい」
ああ、そうだ
俺はコイツを手離したくない
他の野郎の所になんて行かせてたまるか
銀時「…好きだ」