第16章 火傷
〜銀時side〜
体が重い。
銀時「ん"…」
起きることを拒む脳を叩き起して目をこじ開けると、俺はソファーの上に座っていた。
今何時だ…
辺りは闇に包まれ、台所から漏れる光だけが俺を照らしている。
銀時「?」
あり?
俺ァ確かここでテレビ見ながら今回の報酬を数えてたはず…
神楽「んん…スー…」
一緒にテレビを見ていたはずの神楽は俺の肩に寄りかかって寝息を立てている。
銀時「…ったく重てぇなコノヤロー」
米ばっかり食ってっから太ったんじゃねェか?
神楽を刺激しないようにそっと立ち上がると、揚げ物の匂いが鼻をくすぐった。
銀時「…腹へったな」
時計を見れば19時30分
まだ作ってんのか?
黒焦げになった唐揚げとテンパるさくらを思い出し、思わず笑みがこぼれた。
馬鹿正直なさくらがまた一から作り直してたとしてもおかしくはない。
銀時「さくらー。まだ作ってんの…ってあれ?」
台所を覗いてみるがそこにさくらの姿はない。
銀時「どこ行った?」
居間へ戻って電気をつける。
神楽「ん"ん"ー…」
突然の眩しい光に神楽が大きく身じろいだ。
『…ん』
銀時「あれまぁ…」
暗闇に包まれていたために気づかなかったのだろう。
俺にもたれ掛かっていた神楽の肩で、さくらが眠っていた。
テーブルの上では3人分の夕食が湯気を立てている。
銀時「道理で重てェわけだわ。アホ面して寝やがってよォ…のんきなもんだなオイ」
腹も減ったしちょいとつまむとすっかね。
二人を起こさぬ様、細心の注意をはらって狐色の唐揚げに手を伸ばす。
目当ての皿から盗み食いをしたとバレないサイズを選び、口へと運ぼうとした
その時
銀時「…」
手が止まった。
銀時「ひぃ、ふぅ、みぃ、よ…」
目の前にあるのは三枚の皿。
銀時「…お人好しってなァ嫌な役回りだねぇ」
一枚には5つ、残りの二枚には8つの唐揚げが乗っていた。