第1章 短編
「鄙鬼~!!」
名前を呼ばれて振り向くと、肩より短い銀色の髪を揺らしながら駆け寄って来る女の子が見える。
そのまま勢いをころさずに抱きついてくる。
「ピトー、抱きつくのは止めなさい。危ないでしょう。」
何て、心にもないことを言ってみる。
その事を知っている筈なのに、ピトーは私が口をきくたびに嬉しそうに笑みを深めるのだ。
「嘘、本当は嬉しいくせに。」
ニヤニヤと笑いながらそう言うピトー。
無表情の筈なのに何故そう思うのか?もしかして笑っているのだろうか?
疑問に思い自分の顔に手を当てる。
「ぷっ、可愛いなぁもう!」
「・・・?」
「冗談だよ!笑ってないし、嬉しそうじゃないよ!」
そう言われるのも変な気がする・・・。
ピトーは気にしていないのか、私の手を取り歩き出す。
「鄙鬼に見せたいモノがあるんだ!」
鼻歌でもしそうな程ご機嫌なのは、その”見せたいモノ”のせいなのか。
妙に納得しながら、大人しくピトーについて行く。
「ほら!これだよ!!」
と見せられたのは人間だった。
それは足と手が切断されており、生きているのが不思議なぐらい出血している。
おそらく、私に見せる為だけにピトーが捕まえたのだろう。
「これは?」
「ん~と、オーラって言う生命エネルギーを使う人間だよ。見た事ないでしょ?」
キラキラと目を輝かせながら、撫でろと言わんばかりに、頭を差し出している。
ふぅ~と溜息を吐きながら、ピトーのの頭を撫でる。
「どう?綺麗でしょ?死に掛けだから、オーラは弱いけどね。」
「・・・。残念だけど、私にオーラ何てモノは見えないらしい。ピトーの言う綺麗なモノは見えないよ。」
そう言うとピトーは目を見開いたが、それは一瞬の事ですぐに憎々しげに人間を睨みつける。
「チッ、鄙鬼を喜ばす為に捕まえたのに・・・。もういいよ、役に立たないゴミが。」
ピトーは足を振り上げ、勢いよく人間の頭を踏み潰した。
グシャッ、という音とともに四方八方に血が飛び散る。
服についてしまった・・・。
思わず顔を顰める。
それに気付いたピトーが人間を殺したと思えない可愛らしい笑みを浮かべる。
「血がついちゃったの?御免ね。喜んでもらえないって知って、苛々しちゃった。でも、大丈夫。服の替えは沢山あるから!」