第1章 短編
「はぁ・・・。」
思わず溜息がこぼれる。
肘をつきながら、左隣へ目線を寄こす。
「この赤ワインは君の白い肌に映えて、とても綺麗だ。」
安っぽい言葉で女の子を口説いてるシーザーを見て口元が引き攣る。
飲み物が映えていたから何なんだ!お前はそうゆう性癖なのか!肌に赤ワインをかけてレロレロ舐めたいのか!!
なんて内心おどけてみても、やはり辛いものは辛いのだ。
だって、私はシーザーの彼女なんだから・・・。
「ほぅ・・・本当?」
「あぁ、本当さ!」
悩ましげな息を吐いて、うっとりとシーザーを眺める女性は、女の私から見ても綺麗な人だ。
こんな人から告白を受けたら、男の人は二つ返事で引き受けてしまうだろう。
シーザーが口説く人は皆綺麗な人だ。
だから、文句も言えないのだ。
私より綺麗だから、文句を言うときっと私の方が捨てられてしまう。
でも、それも限界だ。
このレストランに来て、3人目の女性が席を立ったのを見て、シーザーに声を掛ける。
「シーザー、私疲れたから帰るね・・・。」
「は?ちょっ、おい!!」
私を責めるような声に、唇を噛み締める。
力を緩めたら泣いてしまいそうだ。
店を出て、少し離れた公園に行く。
こんな顔で家に帰ったら、両親に心配を掛けてしまう。
幸い公園には誰も居ないようだ。
昼間、元気にはしゃぎまわる子供達は疲れたのか、夕方だからなのか、家に帰ってしまったようだ。
そういえば、この公園はシーザーと初めて会った場所だと思い出す。
日本から出てきた私は、慣れない環境に疲れ果ててしまって、そんな私を励ましてくれたのがシーザーだったのだ。
シーザーにとって、簡単に落ちてしまった私は面白みもない女だったのかもしれない。
そんなことを思い出していると、我慢していた涙がボロボロと溢れてくる。
シーザーが追いかけて来てくれるって今も信じてるなんて本当にどうしようもない女だなぁ私は・・・。
涙を拭おうと手を上げた時、誰かにその手を掴まれた。
ハッと顔を上げると眉を寄せて息切れしているシーザーだった。
「心配したんだぞ!!家に行ってみても帰ってないって言われるし!たのむから、急にいなくならないでくれ・・・。」
「何で・・・!」