第1章 Alice。
「すみません、いきなり…着いたらお詫びをしますので。」
…ここはどこだ。僕は、周りを見渡す。先ほどの暗い道とは裏腹に、森の小路のような場所に来ている。こいつもこいつだし、ニコニコしながら僕の首にナイフ突き当てないでください。逃げないよ、多分。
「あの…女王って、なんですか?あと、アリスって…僕はアリスじゃ…」
「質問は後ですよ。ほら、城に着きました。ナイフはもう必要ありませんね。」
すっと優美な動作でナイフをしまった。この人、なんか怖い。優しそうだけど、なんかその裏にもう一つ感情を持っていそうだ。
「…?アリス、こちらですよ。我の部屋に行きましょうか。御一緒してもらえます?アリス。」
何者なのだ。僕は、そいつを睨んだ。一応頷いたが、ナイフ向けられた相手なんか信じたくない。
「それでは、此方へ。」
手を引かれ、先を歩いていくそいつに着いていく。城は、広かった。傷一つない白い綺麗な壁に、赤い大きなドア。床も大理石のようなもので出来ている。
「…広いところに住んでるね。1人ではないでしょ?」
「まさか。我は召使いという文際ですので、住んでるより働いてる、の方が合っております。そして、部屋は借りているのです。あ、此処ですよ。」
そういえば、言っていた。召使いだと。…女王が呼んでるんじゃないのか。はやく終わらせて帰りたいんだ。猫もおいてきてしまったし、お母さんだって家で僕を待っている。ゆっくりしている暇なんてない。
でも、今は言うことを聞こう。いつナイフを向けられるかわからない。
「…テラスみたいな所だね。芝生に、天井はガラス張り。庭みたい。」
「そう頼んでいるのです。読書は、こういうところの方が気持ちがいいのですよ。ハーブティー飲めますか?」
「え、うん…」
僕は、する事がなかったので、ルンルンとハーブティーを準備するそいつを見ていた。