第1章 Alice。
暗くなってしまった帰り道。本当、冬になると日が沈むのがはやい。
あの後、帰ろうと思った僕だが、公園で猫がいたため拾ってしまった。
さっきまで遊んでいたのだが、疲れたのか今は寝ている。気づいたらこんな時間だった。
「お母さん、怒るかな…」
いつもはこんな暗くまで遊ばない(猫だけど)。最近危ない人も増えてるみたいだし、早く帰らないと(一応男だけど、一応中学生)。
猫はすやすやと規則正しい寝息をたてて、気持ちよさそうに僕の腕におさまっている。
人懐こい猫だ、と僕は不思議になる。
なんでこんな知らない奴に無防備になれるんだろう。首を絞められたら終わりなのに。
そんなことを思ってしまう僕は、残酷なのだろうか?…そんなことないよね、常識的な事だ。
「…みゃ?」
「あ、ごめん。寝てていいよ。」
僕が見てたから、起きたのかと思った。でも、そうではないようだ。
僕の背後を見て、歯をむき出している。威嚇している。敵意している。
…なんか後ろにいる?
「しゃあぁぁ…っ!」
「あ、すみません。怒らないでくださいよ。」
猫に簡単に触る。…待て、すぐ後ろにいた。
今の今まで知らなかった。
猫は、未だに威嚇している。怖い。猫じゃなくこの男が。なんでこんな気配を消せた?
「っ…!!」
「おっと…アリス。あまり暴れないでください。」
アリス?僕はアリスじゃない。
そう言いたかったが、首にナイフを突き当てられ言えそうにもない。
…脅しているのか?なんで?この僕を?
いつもより鼓動が速くなる。いつもと違う。
いつもは空なんて見ないし、公園に行ってこんな遅くまで遊ばないし、ナイフを首に突き当てられることもない。
「…!!」
「こんばんは、アリス。我は女王に使える召使いです。女王が呼んでおります。行きましょう。」
…何なんだ、この男は。
僕は初めて、冷や汗というものをかいた。