第15章 私の選んだ道
私の国は道路が整備され街灯が立ち、安全で暮らしやすくなった。港は様々な国の船が途切れなく停泊するようになり、海の向こうの珍しいものも沢山手に入るようになった。
「あぁ、そういえばこの前の牧場の話……」
あまり聞きたくない話題に胸が大きな音を立てた。私が働いていた牧場は首都から港への最短経路の中にあって、大臣たちの間で取り壊して大きな道を作ろうという案が出ていた。
取り壊されたら馬たちは、牛たちはどこに行けばいいのかな。牧場の周囲は険しい山に囲まれていて馬や牛が暮らせるような場所じゃないし、牧草の育ちが良い温暖な地域なのに。
「うん……」とうつむいた私の顎の下に手を置いて、無理やりレンの方を向かされる。
瞳が潤んでいるのにきっと気づかれちゃう……慌てて目を逸らそうとしたけれど、目を細めたレンは楽し気な声でこう続けた。
「牧場は避けて道は作ることにしたから」
「ほ、本当に……?」思わず緩んだ頬でレンの目を覗き込む。「あぁ」って何でもないことのように告げる彼は知ってるんだ。