第13章 彼side4
国王が倒れ、帰国するとすぐに俺は第二王子のミナト王子の元を訪れた。
「単刀直入に言います。王位を、放棄して下さい」
普段から決して俺と目を合わさないようにしているミナト王子が目を見張った。
「俺は第二王子だ。王位を放棄しようが、兄がいるだろう」
蚊の鳴くような声で答えたことに気が付いているのだろうか。弱い犬ほどよく吠える、というがミナト王子はその典型、臆病者なくせにそれを隠そうと必死だ。
「もちろんマナト王子にも放棄して頂きます。
隣国はユイカ姫との婚姻が成立した後、この国を支配下に置こうと考えています。レン王子は本当は冷酷な男。姫さえ手に入れればこの国の王族に興味はない。あなた方を暗殺し、この国を我が物にしようとするでしょう」
わざと低く声を殺して耳元で囁く。
「そんなこと、信じられるか」
笑いを堪えるのが大変だ、ミナト王子の声はひどく震えていた。
「信じられないのなら結構。兄と共に死ねばいい。
私ならあなたのお気に入りの女性と娘さんと共に安全な場所に匿うことはできるが、お二人も一緒に心中なさいますか?」
こうしてミナト王子はあっさりと王位を捨てた。