第12章 私の決心と、彼の決断
国に戻ってきた私は、すぐにお父様の部屋へと向かった。ベッドに横たわっているお父様は今まで見たことのない青い顔をしている。
「姫か……」
「お父様」
「帰ってなど来なくてよかったものを。王子との婚約はまだか。息子たちにこの国は守れぬ。レン王子は切れる。奴なら我が国を悪いようにはせぬ。
お前にかかっているのだ。早く戻れ」
苦しそうに眉を寄せて話すお父様の額には、玉のような汗が浮かぶ。
「でもお父様、私は……」
レン王子との結婚が嫌なわけはない。彼のことを好きになれば好きになるほど、政略結婚という、彼を利用するような結婚が嫌になる。
「迷いがあるのなら、リオンを頼れ……ゴホッ……ゴホッ……」
激しく咳き込んだお父様は喉から風のような音を出し、医者が私を手で制す。……これ以上会話が無理なことは明白だ。
「お父様、心配なさらないで自身のお身体の事だけお考えください。この国は……私が守ります」
今私がお父様の為に言えることは、これだけだった。
お父様は本当に、この国のことだけを考えている。母を犠牲にして、すべてを犠牲にして守って来たんだ。
……私も、心を決めなくちゃ。