第9章 どっちつかず
「紅茶をお持ちしました。
今日はユイカ様の好きな、ローズヒップですよ」
タイミングよく、リオンがワゴンを押して現れた。
「あの、リオン、海ではありがとう」
ふっとリオンが暗い表情をした気がした。でもそれは気のせいだったみたいで、顔を上げた時には笑顔だった。
「ユイカ様は、レン王子のことが好きなのですか?」
私はレンのことが好き……?
唐突な問いにかっと頬が熱を帯びた。リオンが私の足に唇を当てた瞬間、レンに抱き上げられた瞬間を思い出して、何故だか泣きたい気持ちになる。
「あのね、レン王子とは牧場で会ったことがあるの。
その時は王子だって知らなかったけど、動物が好きで素敵な人だなって思った。でも、好きなのかな。……わからない」
一つ一つ言葉を選びながら答える。
リオンはきっと、私にレンのことを好きになってほしいんだよね。それが国の為だから。
それなのに私はレンのことが好きだと言い切れない。
どうして……?