第9章 どっちつかず
想像していた衝撃が来なくて、恐る恐る目を開ける。
……唇が触れそうな程至近距離にあったのはリオンの顔。私は彼に抱きとめられていた。
こんな状況だと忘れてしまうような色白で細い指と、しっかりした腕。執事服で隠れてたから気付かなかったけれど、意外と胸板は厚い。
やだ、ドキドキしてきちゃった。
「ユイカ様、ウニを踏んだんでしょう。すぐに処置しなくては。毒があるかもしれません」
私の動揺に気付いているのかいないのか、シートに降ろされたかと思うと彼は私の足に唇を当てた。
「な、何するの!?」
「毒を抜いておかなければ。じっとしていて下さい」
こ、こんな状況でじっとなんてしてられない
思わず逃げようとじたばたしたけれど、強い力で抑えられて動けないかった。
ドキドキしてるのは私だけなの……?
リオンは救急箱を取り出して消毒した後、手際よく包帯を巻いていく。