第9章 どっちつかず
思わず頬が熱くなって、火が出そう。
「お前、すぐにそんな顔するとこがいいよな。素直で。もっと苛めたら、どんな顔してどんな声だすの?見てみたい」
す、すぐそんなこと言うんだから。
動揺しないようにしないと。
私は平気なふりをして「そ、そんなこと言ってたら先に行くからねー」と駈け出した。
レンと一緒にいると、ドキドキすることばかり。
すごく楽しい。
二人で水を掛け合ったり、大はしゃぎして遊んだ。まるで城に来る前みたいに。王子と姫なのに、普通の恋人同士みたい。そんなことを考えていると、レンが言った。
「ちょっと、あそこの岩まで泳いで来る」
「行ってらっしゃい」笑顔で答えて形の良い肩甲骨を見送る。私もちょっと泳ごうかな。
透き通った水面に足を踏み入れると、黒い影が見えた。
避けなくちゃ、そう思うのにうまくいかず、よろけた私は足の裏に激痛を感じる。
「痛っ」
どこかに捕まろうと手をのばしたけれど、触れるものは何もなかった。
もうだめっ……。