第9章 どっちつかず
海に面した土地の多い我が国の名所と言えば、やっぱり海岸。
隣国は川と湖しかないから、きっと喜んでくれるはず。
ちょうど今は海水浴にも適した季節だし、新鮮な海の幸も食べてもらえるものね。
そう考えて私は、この国で一番美しい海岸へと王子たちを案内した。珊瑚が透き通るって見える、どこまでも青い景色。
「これは美味しい!
魚を火を通さずに食べるなんてと思ったけれど、なかなかいいものだね、レン兄様」
「本当に、素晴らしい料理ですね。
そしてこの海の美しさ……。私は泳ぎが得意でしてね、ぜひ泳いでみたい。
姫、ご一緒によろしいですか?」
「兄様は活動的だからねぇ。
姫、兄様のお相手をお願いしますよ。
僕たちはここでのんびりと海を眺めている方がいい」
まさか本当に王子と泳ぐことになるとは思わなかったけど、仕方ないな。
私も少しぐらいなら泳げるし。
「ええ、お付き合いしますわ」と答えると、後ろから声がした。