第8章 執事side2
行き先は想像がついた。
自分の予感が当たっていないことを願いながら、車の鍵を握り締める。
運転手を呼んでいる場合ではない。
来賓の宿泊を手配したのは俺、たしか第一王子の部屋は1406号室だったはず。
ホテルに着くと従業員が愛想笑いを浮かべて何か話しかけてきたが、俺は無視して銀の箱に飛び乗った。
エレベーターというやつは、どうしてこんなにも時間がかかるんだ。あの手の早そうな王子、甘いマスクで国民の憧れの的らしい。
男慣れしていない彼女のことだ、あっと言う間に落とされてしまうだろう。
強く握った拳が震えて、妙な興奮を覚える。
だめだ、第一王子は大切な来賓。冷静に……冷静に……。
深呼吸をして、俺はドアをノックした。