第8章 執事side2
パーティーでのユイカは完璧だったから、俺は上機嫌で後で褒めてやろうと考えていた。すべて俺の教えた通りに振る舞った彼女は、誰が見ても美しく気高く上品だったに違いない。
ところが、隣国の第一王子に会ってから明らかに様子がおかしくなった。他の誰も気付かなかっただろうが、毎日彼女を見てきた俺にはわかる。
俺の視線を避けるようにして部屋に戻った後も、何か悩んでいるようだった。声をかけると素っ頓狂な声を出して、もう休むと追い出された。
一体、どうなっているんだ?
……やはり、気になる。
足音を殺して彼女の部屋へと向かう。
執事はノックをしない。小さな音を立ててとドアノブを回すと、真っ暗な闇が広がっていた。
「ユイカ様?お休みですか」
返事はなく、ベッドにもどこにも彼女の姿はなかった。