第5章 執事side
それにしても、あの王子たち。
以前から王に相応しくはないと思っていたが、まさか彼女に乱暴までするとは……釘を刺しておく必要があるな。
「おい、リオン。執事ごときが俺に何の用だ」
わざとらしい大声でマナト王子が虚勢を張る。よりによって妃の部屋の前で呼び止めたのだから、姫に乱暴しようとしたことをばらされるのではと、怯えているのだろう。
こういう時は妙に冷静な気分になる。マナト王子の顔が青ざめる音が聞こえたような気がした。
「マナト王子、姫にあのような行為、感心できませんね」
「何だと。お前には関係ないだろう」
自分の声が震えていることを、マナト王子は気づいているのだろうか。
「マナト王子、私は時折王子によく似た女性を町でお見かけするのです。
とても美しい方でして、一度国王にご紹介したいと考えているのですが、お知り合いですか?」
含みのある言い方をすると、女装趣味のあるマナト王子の顔が引きつる。まさか俺が気付いているなど、思いもよらなかったのだろう。
「……あんな田舎女、俺には関係ない。もう関わることはない」
上擦った声で毒づくと、マナト王子は足早に俺から離れていく。
この様子ならば大丈夫だろう。