第4章 突き刺さる悪意
「やぁ、ユイカ。
呼び出して悪かったね。
君とは一度きちんと話をしたいと思っててね」
優しい言葉を口にして、糸のような目をさらに細めてミナト王子が笑う。
けれどもその笑顔は何だか冷たくて、私は身体が強張るのを感じる。
逃げ出したい思いを抑え込んで、部屋に一歩足を踏み入れた。薄暗い部屋の中は私を歓迎しているとは思えないけれど、どういうつもりなんだろう。
中では黒い影が動いて、目を細めてやっと、私はそれが第一王子のマナト王子だとわかった。色黒の肌に細い目、威圧感のある大柄な身体。
カチャリ。
短い金属音に振り返る。ミナト王子が薄笑いを浮かべて、ドアから手を放す。
カギをかけた……?
血の気が引いていく。
怖い、この人たち、怖い……。
後ずさろうとしてもたった一歩で背中がドアに当たる。
「前から思っていたんだよね。
僕たちが王位を継げば、目障りな隣国の介入なんていらないって」
「父上は君が向こうの王子と結婚すればと思ってるみたいだけど、僕たちは君なんて必要ないよ」
「まぁ、こんなみすぼらしい娘、向こうが気に入るとも思えないけど、傷モノになれば、尚更だよね?」
あざ笑うような二人の声を背中に鍵を開けようとしたけれど
、後ろから強く抱きすくめられる。
「嫌っ‼!」
逃げなきゃっ。