第4章 突き刺さる悪意
「ユイカ様、ミナト様がお呼びです」
城に来て2ヶ月経ったある日、第二王子からの伝言が届いた。
「天気がいいのでレッスンが終わったら外でランチにしましょう」というリオンの言葉を励みに、ダンスのステップを練習していた私は、思わず顔をしかめる。
珍しい。
ここに来てから一度も、挨拶すら返事もしてくれたことはないのに。
何となく嫌な予感がする。
……でも王子からの誘いを断るなんて、出来るわけはない。
水面に墨を落としたように広がっていく不安を胸にリオンを探すけれど、見当たらない。ランチの為に私の大好きな紅茶を準備してくれているのかもしれない。
仕方ない。
王子を待たせるなんて失礼なことは出来ないし、リオンには手紙を書いておこう。
内心を写すように少し乱れた文字にひとつため息をついて、私は部屋を後にした。