第2章 story2“気付いた想いの名は”
城内に戻った二人の元へ彩芽に仕えている女中が歩み寄る。
「あぁ、彩芽様、こちらにいらしたのですね」
「あ、洗濯物を干していました、私に何か用事ですか?」
「昌幸様からのお言付けです、夕食の後に彩芽様にお話があると仰っておりました」
「昌幸様が私に話……」
何の話があるのか、彩芽は不思議に思ったけれど、すぐに女中に言付けた。
「夕食後にすぐに伺いますと伝えて下さい」
「かしこまりました」
彩芽と幸村に一礼をするとすぐに踵を翻し、女中はその場を立ち去った。
「昌幸様のお話、なんだろう…」
「さぁ…私も何も聞いていなくて」
二人で顔を見合わせ首を傾げた。
夕食後。
彩芽は昌幸の部屋を訪れていた。
「昌幸様、彩芽です」
「あぁ、入りなさい」
「失礼致します」
襖を静かに開けると優しい笑顔で昌幸は彩芽を迎え入れた。
「遅くに呼び立ててすまないね」
「いえ、大丈夫です……昌幸様、お話って…」
「彩芽、御茶を頼めるかな」
「あっ、はい」
彩芽は昌幸の部屋にある茶器で慣れた様子で御茶を淹れる。
「お待たせ致しました」
彩芽の淹れた御茶を一口飲むと昌幸はにっこりと微笑んだ。
「……御茶を淹れるのも上手くなった」
「ありがとうございます」
「彩芽が此処に来てもう二年以上経つのか…怯えた目のお前を幸村が連れてきた時には少し驚いたのを覚えているよ」
「……昌幸様にも、幸村にも本当に感謝しております………感謝してもし切れない程です」
「いや、私も娘が出来たようで楽しんでいるよ」
昌幸は御茶を啜りゆっくりと口を開いた。
「彩芽…、今年でいくつになった」
「16になりました」
「16か…あの頃よりも、綺麗になった」
「…昌幸様?」
普段言わないような事を昌幸に言われ、彩芽は少し戸惑っていた。
「…信之も幸村も、いずれ真田の為に婚儀を行うこととなる」
「…………」
突然の話に彩芽はごくりと唾を飲み込んだ。