第18章 story17“藤棚の祈り”
三成や幸村、そこに島左近も加えた制圧隊が関東忍城に辿り着いて一週間が経とうとしていた。
「慌てて作った堤防で…上手く行きますかねぇ」
「やるしかないのだよ、でなければ秀吉様より大軍を預かった我らの名折れだ」
忍城を攻めるにあたり三成達がとった策は水攻めだった。
その為の堤防をたった五日で仕上げたのは良いものの、左近は堤防の強度が心配でならなかった。
三成は焦りを感じていた。
初めて任された大軍の総大将。
大がかりな水攻めの指揮。
(何としても勝たねばならん…これは秀吉様の力を見せつける天下の戦なのだ)
「三成様、南側の堤防の作りに多少の不備が見られるとの報告が…手直しに向かわせますか?」
「いや…時間がない、このまま攻める」
「しかし三成殿、もしも堤防が決壊すれば…自軍にも被害が出ます!」
家臣からの報告を聞き流す三成に幸村が言い寄る。
「川の水量は既に計算してある、問題ない」
「三成殿!」
幸村の制止も聞かず歩き出す三成はそのまま陣中へと戻ってしまった。
「無駄だ」
「左近殿…」
二人の様子を見ていた左近は幸村に苦笑いを向けた。
「殿はまだ一人で戦おうとしている、全部背負い込もうとしてるのさ…」
「尚更このままでは…!」
「俺は見守るよ、この戦で殿がまた一つデカい男になるなら…例え兵の犠牲が出たとしても、ね」
「左近殿…」
目を細めて三成の陣中を見つめる左近に幸村は静かに言った。
「ならば私は…三成殿や他の兵を護るまでです」
「あぁ…同感だ」