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戦国四重奏 (戦国無双3)

第17章 story16“家族”


「戻ったら、話したい事がある」

「話したいこと…?」

「あぁ、だから俺は必ずお前の元に戻る」

「…うん」

清正の言葉にじんと胸が熱くなる。

翌日の早朝、秀吉率いる軍勢は小田原へと出陣した。
彩芽との約束を胸に、清正も颯爽と馬で掛けていった。




そしてその数時間後の大阪城では三成と幸村が対面していた。

「三成殿、お待たせ致しました」

「いや、遠路ご苦労だった…」

「はい」

必要な話だけ済ませると三成は黙りこくってしまう。そこへ彩芽が通り掛かる。


「幸村…?」

「…!彩芽殿…」


幸村がずっと会いたかった彩芽、だが三成は出来れば二人を会わせたくなかった。

「………」

彩芽の脳裏には幸村の告白が蘇る。
一瞬にして顔を赤く染める彩芽を三成は見逃さなかった。

「幸村、出陣は明日…兵の準備を整えておけ」

「はい」

明日の出陣、その言葉を聞いて彩芽の顔が強張る。

「……明日…」

「心配するなと言っただろう…我らが負けるはずなどないのだよ」

「うん…三成…」

彩芽の頭を撫でる三成は見たことがないほど優しい顔をしていた。
その後、彩芽は他の女中に呼ばれそのばをたちさった。


「三成殿」

「………」

「もしや…三成殿は、彩芽殿を…」

先程の三成の表情から幸村が感じ取ったこと。
三成は幸村がその先を言う前に真っ直ぐ幸村を見据えて答えた。




「俺はアイツが好きだ」

「………やはり」

「だが…今は戦の事だけを考えろ」

そう言って三成もその場を後にした。
1人残された幸村は彩芽の去った方を見つめて佇んでいた。

(動揺したまま戦に挑んでは駄目だ…)

翌日は出陣の朝に相応しい晴天となった。

「三成、気を付けて…」

「あぁ、大人しく此処で待っていろ」

三成に言葉をかけた後、彩芽は幸村に向き直る。


「幸村…絶対、帰ってきてね」

「以前と何も変わりません…」

「え?」

「私は必ず貴女の元へ帰ります」


胸が締め付けられそうだった。
泣きそうになるのをぐっと堪え、彩芽は笑顔を作る。

彩芽が願うのはただ一つ、

(どうか、皆無事で…)

それだけだった。
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