第15章 Story14“星空の下の決意”
「春になったら出陣じゃ!」
秀吉のこの言葉で大坂城内は更にせわしなくなっていった。
家臣達は日々の稽古にいつもよりも熱が入り木刀の激しい打ち合う音や気合いの声が響き渡っていた。
「はぁっ…!」
清正も同様に鍛練を積んでいた。肌寒くなってきた空気とは反対に清正の顔からは汗が滴り落ちる。
三成は迫る戦に備えて黒田勘兵衛らと共に軍事会議を行う日々を過ごしていた。
忙しさで部屋に籠りきりの日も増えた。
そして彩芽はと言うと、来る戦に何とも言えない不安を抱えていた。
(やっぱり…怖いな……)
父や兄を奪った戦。
前向きになど考えられる筈がなかった。
ただ、一つ揺るがない事はもう大切な人達を失いたくないと言う事。
「私が、出来る事は何だろう…」
そして何度目かの溜め息をつく。
それがここ最近の大坂城の日常だ。
「彩芽ー?おーい、彩芽ってば!」
「きゃっ!…お、おねね様!?」
ぼんやりしていた 彩芽はねねが間近に来るまで気付かず思わず声をあげてしまった。
「す…すみませんっ!」
「珍しいね、 彩芽が ボンヤリしてるなんてさ」
どうしたのと、聞くねねに 彩芽は黙って俯いた。
そのまま小さく呟く。
「戦が、その…怖くて…」
「戦?大丈夫!大坂は安全だから!心配する事ないよっ」
「いえ…っ違うんです…」
「?」
膝の上で着物を握りしめる。
「誰かが……居なくなるのが、怖いんです…」
「…彩芽」
ねねは優しく 彩芽を見つめ、そっと抱き締めた。
我慢していた物が溢れるように 彩芽の目から大粒の涙が零れ落ちる。
「秀吉様も、おねね様も、清正も三成も正則も…!幸村も、居なくなるのが怖いんです…!父上や兄上の様に…」
微かに震える 彩芽の肩をねねは強く抱いた。
「大丈夫!みーんな強いんだから!負けたりしないよっ!」
「おねね、様……」
「そうだよね?清正、三成!」
えっ?と驚いて 彩芽が振り返ると廊下の陰から二人が顔を出した。