第12章 story12“感じるぬくもり”
「あぁ、そうだ」
「三成?」
何かを思い出したように三成は再び彩芽の前に膝をついた。
そして何も言わずにそのまま 彩芽を抱き締めた。
「みっ三成…?///」
「腕は、ここだ」
慌てる 彩芽に構いもせずに三成はさらりと言い、 彩芽の腕を自分の首に掛ける。
「なっ…!おい、三成!」
清正がそれを見て声を掛ける。
「俺だけ…抱いてなかったんでな」
「……っ!///」
耳元でそう囁かれ 彩芽は肩を竦めた。
やっと解放されたものの、 彩芽の顔は真っ赤に染まっていた。
そんな 彩芽を見て満足そうに三成は笑い、部屋を後にした。
一人になった 彩芽は顔の火照りを冷ましながらふぅっと一息つく。
(兄上…私、戻って来れたよ……)
窓の外の空を見上げる。
雲が高い夏の空だった。
「お風呂に入ろう、スッキリしなきゃ」
彩芽の入浴後、ねねが特製おむすびを持って部屋に来た。
清正、三成、幸村、正則にくのいちも加え大いに賑わう昼食となった。
その夜、 彩芽は城の中庭の藤棚の所へやって来た。
「兄上…もっと、ちゃんと話したかったな」
夢の中で会えた兄を思い出し 彩芽は藤棚を見上げる。
花ではなくたくさんの葉が茂る夏の藤棚。
「 彩芽殿」
声の方を振り返ると幸村が歩いて来るのが見えた。
「どうかしたのですか?…藤?」
「うん…眠ってる時にね、兄上に会ったの」
「!…そう、でしたか」
「心配しなくても悲しんでないよ!…むしろ、お別れちゃんと出来て嬉しかった」
安心したように幸村は微笑み、尋ねる。
「兄上は…何か言われていたのですか?」
「…戻らなきゃダメだって、待ってる人がいるからって」
幸村の顔を見つめながら 彩芽は笑う。
「そう言ってくれたよ」
「… 彩芽殿///」
「お昼御飯食べながら、皆が待っててくれたんだなぁって…嬉しくなっちゃった」
「皆……?//」(わ、私だけなわけないか…//)
自分一人を特別に思っていたわけではないと気づいた幸村は恥ずかしさで赤くなる。
しばらく二人で藤棚を眺めていた。
時間が経つのも忘れてしまうほどに。
夜はゆっくりと二人を包んでいった。