第12章 story12“感じるぬくもり”
目を開けると見慣れた天井が見えた。
それと共に 彩芽の瞳から涙が一筋、流れ落ちた。
ゆっくりと上体を起こした 彩芽を清正がいち早く抱き締めた。
「き…清正…?」
「どれだけ心配掛けんだよ…馬鹿……」
ぎゅうっと音が聞こえそうなほど、強く抱き締める。
「……ごめんね、清正」
小さく謝る 彩芽の言葉を聞いて清正はそっと腕を離す。
視界が開け、 彩芽は部屋を見渡した。
「心配したよ… 彩芽…でも良かった」
「おねね様…」
「体は…痛むところはないか?」
「三成…うん、痛くないよ」
壊れ物に触れるかの様にそっと頬に触れる三成。
彩芽は大丈夫と、三成に笑い掛ける。
三成と言葉を交わす 彩芽の様子を幸村はじっと見つめていた。
自分も話したい気持ちはあるのに、言葉が出てこない。
視線を感じた 彩芽は幸村に目を向け口を開く。
「……幸村…」
少し震えた声だった。
「私…ずっと幸村に謝りたかったの……!あんなに上田でお世話になっていたのに、何も言わずに別れた事…ずっと後悔してた」
「 彩芽、殿…」
布団の上で 彩芽はぐっと自分の手を握り締めた。
「ホントに…ホントにごめんなさい、幸村……」
彩芽の目には一杯に涙が溜まっていた。
その涙が溢れないように、 彩芽は唇を噛みしめる。
「……っ!!」
「ゆ、きむら……」
涙を見て幸村は堪らず 彩芽を抱き締めた。
「私こそ、すみません… 彩芽殿の声に気付いていたのに」
「いいの、こうしてまた話せたんだから…」
懐かしい幸村の匂い。
胸がきゅうっと締め付けられる気持ちだった。