第10章 story10“いくつもの後悔”
「幸村様!早く彩芽さんの所へ!」
くのいちの声に我に返った幸村は清正の元へと急いで駆け寄った。
「彩芽…!」
「触るな」
清正に抱かれた彩芽に手を伸ばした幸村を清正は止める。
「……清正殿」
「コイツはお前を追っていた、だがお前は…気付いていながら気付いてないふりをした、違うか」
「………」
「必死に走ったんだろうよ…」
鼻緒が擦れて赤くなっている彩芽の足へ視線をやる。
清正は彩芽を抱く腕に力を込めた。
「城へ、戻る」
「…私も行きます」
「お前等はもう上田に戻れ、彩芽は俺が 「行きます」
清正の言葉を強く遮り幸村は言い放った。
「幸村様」
「そなたは一足先に上田に帰ってくれ、父上に…この事を話し、彩芽が目覚めるまで私は側にいると伝えてくれ」
「!!…承知っ」
くのいちは返事をするとその場から姿を消した。
「清正殿、大坂城へ戻りましょう」
「………わかった」
城に戻った二人は彩芽を部屋に寝かせ、侍女たちに手当てを頼んだ。
「清正っ!!」
彩芽の部屋の前にいた清正と幸村の所へ三成が駆け込んできた。
「一体何があったと言うのだ!何故彩芽は!!」
「………」
「……すまない、取り乱した」
「…私の責任なのです、私のつまらない意地が彩芽を」
幸村は顔を歪め、拳を握り締めた。
彩芽の存在に気付いた時に足を止めていればこんな事にはならなかった。
父との約束は守ったが、彩芽を守れずにいて何になろう。
「幸村…」
「馬鹿野郎…自分のせいだけだと思い上がるな」
清正も静かに口を開いた。
あの時繋いだ手を離さなければ、
無理矢理にでも止めていれば、
考えれば考えるだけ後悔だけが脳裏に広がる。
今はただ、彩芽の目覚める事を祈るしかない。
こんな時、自分たちは無力だと感じずにはいられなかった。