第10章 story10“いくつもの後悔”
彩芽には幸村に会えたらずっと伝えたかったことがあった。
何も言わずに居なくなったこと、呼び止めてくれたのに目を見れなかったこと、ずっと謝りたかった。
(嫌われたとしても…一言謝りたいの…幸村!)
彩芽が自分を追ってきているなど思っていない幸村はくのいちと合流し、大坂の街を歩いていた。
「幸村様、何処へ向かわれてるんです?」
「いや…」
目的はなかった、ただ…もしかして彩芽の姿があるかも知れない。
会話はせずとも元気な姿が見られたら、幸村はそう思っていた。
こんな自分は女々しい、そう感じながらも。
「あ、すごい!立派な山車ですよ、幸村様!」
きらびやかに飾られた山車を何人もの男が引いていた。
山車に気をとられ足を止めた幸村の耳に微かに聞こえてきた声。
「…幸村っ!」
それは、聞き間違えるはずのない確かな彩芽の声だった。
「…………!」
「あれ、あの子…さっきぶつかっちゃった子だ、幸村様知り合いなんですか?」
そう言ってくのいちは幸村の顔を覗いてすぐに察した。
「…幸村様、もしかしてあの子が」
「………行こう」
「え、ちょ…ちょっと幸村様っ?!」
彩芽の呼び掛けを無視するように歩みを進める幸村にくのいちは慌てて駆け寄る。
「あの子…彩芽さんなんじゃないんですか?!」
「……会うことは、許されていないのだ」
「でも…!」
くのいちの制止も聞かず幸村は歩き続けた。決して、振り向くことなく。